2020年03月16日
新型コロナショック‼ オペ選びは慎重に!
新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の経済活動に広範囲に大きな影響を与えています。
法人が、利益の繰り延べに利用するオペレーティングリース案件にも影響が出るかもしれません。
2020年3月3日に日経新聞で「海航集団、経営に政府関与」という記事が掲載されました。
海航集団(HNAグループ)は、海外企業への出資や買収で急成長しましたが、巨額の負債や香港デモの影響で経営が悪化し、さらに新型コロナウイルスの感染拡大で主力の航空事業が打撃を受け、立ちゆかなかくなったそうです。
同じ日に、タイ航空の2019年12月期連結決算が415億円の赤字になったことが報じられています。2020年に入ってからは、新型コロナの影響で中国人旅客が激減しているそうです。中国路線に加え、日本やシンガポールなどアジア路線を中心に減便するそうです。
さらに同日、韓国アシアナ航空が、全社員を対象に3月中に10日間の無休休業を義務付ける方針を明らかにしたことが報じられています。希望者には最大3ヶ月間の給食も認めるそうです。アシアナ航空は、「経営非常事態」を宣言しており、社長は全額、役員は50%の報酬返上を決めているとのこと。
韓国政府がまとめた韓国内航空会社の乗客数は、2月第3週の17~23日に前年同月比84%減となったそうです。
2020年3月6日の日経新聞で「英地域航空が破綻 フライビー新型コロナ拡大で」という記事が掲載されました。
英地域航空会社のフライビーが経営破綻したという記事です。3月5日から全ての航空便の運航を停止したそうです。
フライビーは、1979年創業で、年間旅客数は約800万人と欧州最大級の地域航空会社なのだそうです。そんな航空会社があっさり経営破綻しました。
欧州では、イギリスのブリティッシュ・エアウェイズやドイツのルフトハンザ航空など大手が、域内での減便を相次ぎ決めたとのこと。ブリティッシュ・エアウエイズはドル箱のロンドン-ニューヨーク路線の運航を減らすとのこと。
国際航空運送協会(IATA)は、新型コロナの感染拡大が続いた場合、2020年の世界の航空旅客収入に最大約12兆円のマイナス影響が出るとの見通しを発表したそうです。マイナス影響は、世界の旅客収入の2割にあたり、米金融危機に匹敵する減収規模になりうると報じられています。
2020年3月7日の日経新聞で「世界の航空株 急落 新型コロナ旅客減」という記事が掲載されました。
世界最大手の米アメリカン航空の株価は40%下落。LCCのジェットブルーは3割超の下落。アジア周辺でもニュージーランド航空、エアアジアなど下落率2割以上の銘柄が多いそうです。
航空会社は、運行状況にかかわらず発生する機体の償却費用やリース費用、整備費、パイロットや地上スタッフらの人件費といった固定費の負担が重い体質です。影響費に占める固定費の割合は、JALが4割、ANAが5割強とのこと。固定費を賄うために必要な座席利用率は、両社との約5割とされるそうです。直近の国内線減便対象になった路線の多くは5割を下回っていたそうです。
リーマン・ショック級の影響が出始めており、今のところ回復の見通しは立たないとのこと。
2020年3月8日の日経新聞では、「世界の信用市場、動揺続く」という記事が掲載されました。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引で企業の信用力を映す指標が軒並み悪化しているそうです。
米アメリカン航空の保証料率(5年物)は3月6日、8.36%と前日から3.38ポイント急上昇したとのこと。
2020年3月12日の日経新聞では、「アジアの空 苦境」という記事が掲載されました。
キャセイパシフィック航空は、2020年1~6月期に大幅な最終赤字になる見通しと発表したそうです。昨年6月に始まったデモの影響で旅客が大幅に減り、新型コロナの影響で3~4月は運航能力の65%を削減するそうです。
シンガポール航空は2~5月にグループ全体で運航能力の15%にあたる5千便の欠航を決定。オーストラリア最大手のカンタス航空は9月まで国際線の輸送能力を23%削減。韓国は世界60ヵ国から入国規制され、飛ばす先がないという深刻な状況。既に報じられていた通り、タイ国際航空は3期連続赤字。フィリピン航空も機材リース費用などが重く、2019年12月期の赤字が約220億円と過去最大になったとのこと。
キャセイは全従業員に3週間の無給休暇を求め、シンガポール航空は3月から経営陣の報酬カットや地上職の採用凍結を打ち出し。フィリピン航空は全従業員の約5%にあたる地上職300人を削減し、資本増強の準備を進めています。
LCCは、危機的状況です。
インドネシアのライオン航空がマレーシアで合弁展開するマリンド航空は資金繰りが悪化し、給与の遅配が発生。韓国は全社が無休休業を実施するが、機材リース費用など固定費が大きく、2020年12月期に黒字期待できるのは大韓航空だけとのこと。
2020年3月14日の日経新聞では、「米の入国制限まで猶予2日 欧州空港に旅客殺到」という記事が掲載されました。
米国では欧州大陸からの外国人の入国禁止措置が決定されており、入国禁止までに2日しか猶予がなく、欧州の主要空港には駆け込みで米入国をめざす旅客が殺到したそうです。
3月14日以降は欧米間の運航便が大幅に減少する見通し。米デルタ航空は、パリと米国の主要4都市を結ぶ直行便など欧米間の7路線を運休すると発表。ドイツのルフトハンザも欧州の一部空港と米国の運休を決めたとのこと。
同じ日に、オーストラリアで2位のヴァージン・オーストラリアが輸送能力を最大7.7%削減すると発表したと報じられています。ANAの羽田新規就航路線の延期も発表されています。JALも延期になる可能性が高いとのこと。
手元の現預金が売上高の何カ月分あるかで資金繰りの「耐性」をみると、JALは約2.7ヶ月分、ANAも2.3ヶ月分。米アメリカン航空やデルタ航空が1ヶ月分程度なのだそうです。ルフトハンザも1ヶ月分程度。
大手航空会社でも意外に手元キャッシュに厚みがないことが分かります。経営破綻が懸念されます。
記事にも取り上げられたキャセイパシフィック航空は、優良な航空会社として認知されていました。キャセイが賃借人になっている日本型オペレーティングリース案件も多く、キャセイは安心な賃借人として認知されていました。キャセイのオペ案件は、円償還が予定されているものもあり、投資家に人気の銘柄でした。
キャセイのような銘柄も先が読めない状況です。
賃借人である航空会社が経営破綻すれば、当然リース料は支払われません。
オペレーティングリースの営業者は、飛行機を押さえなければなりません。素早く飛行機を押さえられたとしても、飛行機の駐機費用や弁護士費用など想定外のコストがかかります。
押さえた飛行機はできるだけ高値で第三者に買ってもらわなければなりません。航空機を高値で買ってもらうためには、機材がきちんとメンテナンスされた状態であることが望ましいのですが、その時の状態で引き取るしかありません。中古市場での売却には不利です。
そもそもこのような経済状況下で高く売れるはずがありません。加えて営業者は機材の売却を急ぎます。価格よりも時間が優先される可能性があります。さらに売却価格は下がる可能性があります。
市況が戻るまで、駐機代を払ってでも売却を待たせれば良いという投資家もいるでしょう。しかし、匿名組合員である投資家は、議決権を持ちません。営業者の決定に文句を言える立場ではないのです。
2020年3月以降決算法人向けのオペレーティングリースが大量に供給されています。オペは金融商品かのように投資家に案内されているケースも散見されますが、投資家がリスクをとって事業投資を行う案件です。
今一度、賃借人やリース物件、リース契約等案件の作り込みを注意深く確認して投資検討することをお勧めします。
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