2023年02月06日
「星の王子さまミュージアム」の閉園、そして、この作品の魅力とは?
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惜しまれながら、今年3月31日をもって閉園・・・
神奈川県西部になる箱根といえば、観光スポットとして、温泉町であり、ご当地グルメが人気です。
さらに、彫刻の森美術館をはじめ、箱根ガラスの森美術館、ポーラ美術館など、美術館が多くあることも魅力です。
その一つ、「星の王子さまミュージアム」が、2023年3月31日をもって、閉園することになりました。
コロナ禍による来園者の減少や建物の老朽化が閉園の理由とのことです。これまで「星の王子さま」を何回となく読んだ自分としては、とても残念です。
このミュージアムは、「星の王子さま」の作者であるサン=テグジュペリ生誕100年を祝した世界的記念事業として、1999年6月29日に開園されました。園内は、20世紀初頭のフランスの街並みが美しく再現されています。
先月末に訪れてみましたが、閉園を惜しむ、幅広い年齢層の来園者で、施設内は賑わっていました。
稀代の名作「星の王子さま」、聖書に次ぐベストセラー
「星の王子さま」は、1943年に初めて出版され、 300以上の言語で翻訳、世界累計発行部数は2億部以上にのぼります。
聖書に次ぐベストセラーとも呼ばれ、大人から子どもまで幅広い層に愛されています。若い方の中には、映画「リトル・プリンス 星の王子さまと私」(2015年製作)で知った方もいらっしゃるでしょう。
作品中、語られる「大切なものは目には見えないんだよ……」との言葉は、あまりに有名です。
日本では、1953年に岩波文庫として翻訳出版され、2005年に翻訳出版権が消失したため、現在は、数多くの翻訳が出版されています。
友人の勧めで、翻訳の異なる「星の王子さま」を読み比べてみました。なるほど、ニュアンスの違いも感じられ、読書の楽しみの一つになりました。
コロナ禍、美術館の経営を直撃
新型コロナウイルスの感染拡大して4年目を迎えました。
この間、国内全国の博物館や美術館は、休館や入館制限を余儀なくされています。2020年の収入は2019年比60%減、感染対策や事前予約制度の導入などでコストは増加、経営がたち行かなくなり、閉館に追い込まれる中小の施設もあります。
日本博物館協会のアンケート調査(2021年)でも、全国の博物館や美術館の厳しい経営状況が浮かび上がったそうです。新たな運営体制の構築が不可欠になっています。
ちなみに、「三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)が新型コロナウイルスによる入館者急減で大幅赤字となり、市がふるさと納税を使って寄付の募集を始めたところ、わずか1日で目標の1000万円を突破、全国のジブリファンからの寄付はその後も増え続け、関係者を驚かせたそうです。
「アートを見る」と洞察力が高まる?
さて、コロナ禍以前より、久しく美術館に足を運んだことがない、と言う方も多いかもしれません。ところで、ここに気になる研究結果があります。
エール大学の研究者グループは、医大生を対象にアートを用いた視覚トレーニングを実施したところ、アートを見ることによって観察力が向上することを証明したそうです。
人工知能は、あらかじめ入力する情報の枠組みを作ってあげないと情報処理ができません。
それに対し、エール大学は、「入力される情報として定型化されない範囲まで観察し、観察された事象から様々な洞察を得て意思決定の品質を高められる」との指摘をしています。
今年は、「ルーブル美術館展」「重要文化財の秘密」「佐伯祐三展」その他、話題の美術展が多数あります。ぜひ、博物館や美術館に足を運んでみてはいかがでしょう?
王子さまの最後・・・ 大人にこそ読んでもらいたい
今回、「星の王子さまミュージアム」閉園のニュースに接し、久しぶりに倉橋由美子さんの新訳で「星の王子さま」を読み直してみました。
小説は、「この人がかつて子供だった、その子供にこの本を捧げたい。大人もみな最初は子供だった。」との献辞から始まります。
この作品を童話ととらえている方も多いかと思いますが、大人が読むための小説です。あらすじも単純ではなく、謎に満ちています。
王子さまは、小さな星で「一輪のバラ」と暮らしていましたが、仲違いをしてしまい自分の星を出てしまいます。
いくつかの星をめぐり、地球に辿りつくと、パイロットやキツネたちに出会います。
そして、自分の星にいるバラは、地球で見たたくさんの普通のバラではなく、唯一無二のバラだと気づき、バラに会うため、地球を離れることになります。別れの場面で、王子さまは、これも有名な次の言葉を残します。
「きみが夜、空を見上げると、あの星の中の一つにぼくが住んでるんだから、その星の中の一つでぼくが笑っているんだから、きみにとっては全部の星が笑っているようなものだ。きみは笑ったりすることができる星を持つことになるんだよ。」
物語の最後、王子さまは、バラに再会するため、怖れつつも、毒蛇の噛まれ、自ら死を選びます。ちょっと残酷な印象があります。王子さまはなぜ死ななければならなかったのでしょう?
これまで、「星の王子さま」に一度も縁がなかった方はぜひ、この本を手にとってみてください。この小説のおく深さを知るとともに、きっと、新鮮なおどろきがあると思います。
もし、お近くにお住まいならば、「星の王子さまミュージアム」に足を運んでみてはいかがでしょう。きっと、どこか憂いのある王子さまに出会えますよ。