コラム Column

2011年05月12日

疑わしきは罰せず

こんにちは(^O^)/
本日の日経新聞に「税制改正17年ぶり修正へ」という記事が掲載されています。
地震の影響で大幅に遅れている2011年度税制改正法案を修正する方向とのことです。
目玉の法人実効税率引き下げは先送りが濃厚。
所得税や相続税の増税も凍結の可能性とのこと。
減税措置だけが凍結となり、増税案はそのままかと思っていましたので、増税案が凍結というのは良い流れです。

さて、重い重い課税から逃れたいというのは人情。
相続税対策をめぐった大きな裁判で、課税当局が負けるという判決がまたありました。
国が負けた裁判で記憶に新しいのは、武富士事件ですね。
今回は、大手教育出版社「中央出版」の元会長が米国籍の孫に贈与した海外財産への課税の可否をめぐり争われた裁判です。

なんと、この裁判、原告は「中央出版」の元会長の7歳の孫だそうです。
2011年5月2日号の納税通信によると、元会長はアメリカの信託会社との間で、アメリカ国籍を持つ孫(原告)を受益者とする500万ドルの信託契約を締結し、信託会社はそのうち440万ドルを支払い、原告の父親を被保険者とする生命保険に加入しそうです。
保険事故が発生すると、保険金は原告に分配される内容となっていたそうです。
外国籍で生活の本拠地が海外である場合、海外の資産を贈与されても贈与税は課税されないという日本の税制を利用した節税スキームとのこと。

これに対して国税当局は、その孫の生活の本拠が日本にあったと判断。
また、信託契約の委託者と受託者が異なる場合、受益者は信託契約があった時にその権利を贈与により取得したとみなすとする相続税法(4条1項)を根拠に、5億4千万円の申告漏れを指摘、約3億1千万円(加算税含む)の課税処分を行ったそうです。

名古屋地裁は、信託財産のほとんどが生命保険契約に当てられていること、原告の父親が投資顧問となっていることなどから、信託契約と同時に原告に利益が発生しているとはいえないとし、原告が「受益者」に当たるとは認められないと判断したそうです。
従って、、原告が受益者であることを前提とした課税処分は、ほかの争点を判断するまでもなく違法であると判断したとのこと。

確かに、受益者がすぐには「受益」できないスキームです。
このような判断が出てくると、信託の税務もグレーゾーンができ、いろいろな考え方ができるということでしょうか。
今回は、原告の生活の本拠地が実質的にどこであったかなどには触れられていないようです。

この裁判の先行きが気になりますが、「疑わしきは課税」という時代ではなくなってきているということは言えるのでしょう。

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