2022年01月27日
【はじめてでも分かる!】生前贈与・暦年贈与の基本と問題点を徹底解説
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令和3年の税制大綱で「検討を進める」と書かれていた「相続税と贈与税の一体化」は、令和4年の税制大綱でもその導入が見送られました。しかし、今後も検討が続くことから、将来いつ導入されてもおかしくない状況に来ています。
そこで、この制度が導入される前に生前贈与や暦年贈与を確実に行い、相続税の節税へつなげるためにはどうすべきかを考えてみましょう。
贈与と相続の関係について
相続税も贈与税も、どちらも個人から個人へ財産が移るという点では変わりありません。違いがあるのは、財産を渡す人が生きているのか、それとも亡くなっているのかです。
財産を渡す人(贈与者)が生きているうちに、財産をもらう人(受贈者)に財産が渡った場合を「贈与」といい、財産を渡す人(被相続人)が亡くなってから財産をもらう人(相続人)に財産が渡るのを「相続」といいます。
ちなみに、贈与で渡される財産を贈与財産といい、相続で渡される財産を相続財産といいます。ただし、財産を渡す人が亡くなる前3年以内に贈与した贈与財産に関しては、贈与財産ではなく相続財産に含まれることになっています。
生前贈与の種類は4つ
生前贈与は、下の2種類に分類することができます。
- 利用目的が定められていない贈与
- 利用目的が定められている贈与
利用目的が定められていない贈与
利用目的が定められていない贈与とは、受贈者が贈与財産を何に使っても構わない贈与のことをいいます。これには以下の2つがあります。
- 暦年贈与
- 相続時精算課税制度
暦年贈与については、次章で詳しく解説します。
相続時精算課税制度とは、一定の条件下で、将来相続人になりそうな人に対して相続財産の先渡しをする制度のことをいいます。一応生前贈与ではありますが、この制度を使って贈与された財産は相続時に相続財産に持ち戻されてしまうため、厳密に言えば贈与とは言い難い部分があります。
利用目的が定められている贈与
利用目的が定められている贈与とは、受贈者が贈与を受けた財産の使用用途があらかじめ定められている贈与のことをいいます。これには以下の2つがあります。
- 住宅取得等資金の贈与
- 教育資金の贈与
住宅取得等資金の贈与とは、子供ないしは孫が住宅を購入するための資金援助であれば一定額まで贈与税が非課税となる制度のことをいいます。
教育資金の贈与とは、30歳未満の子供や孫に教育資金を贈与するなら1500万円まで贈与税が非課税になる制度のことをいいます。
どちらも贈与を受けた資金の使用目的などが定められているため、条件を満たさなければ贈与税が課税されます。
暦年贈与とは
贈与税には、毎年110万円の基礎控除が認められています。これは、1月1日から12月31日までの間に行われた贈与の合計金額から110万円を差し引くことができる制度のことをいいます。この制度を活用し、毎年相続税がかからない110万円以下の贈与を継続的に行うことを暦年贈与(れきねんぞうよ)といいます。暦年贈与は贈与税が非課税になるだけでなく、申告する必要もありません。
暦年贈与を繰り返すと非課税で財産が移転できるため、将来の相続財産を減らすことができます。そのため、手軽に行える相続税節税として幅広く多くの人に活用されています。
暦年贈与の問題点
暦年贈与は使い勝手が良いため多くの人に活用されていますが、実は問題点もあります。その問題点とは以下の2点です。
- 名義預金とみなされる場合がある
- 定期贈与とみなされる場合がある
名義預金とみなされる場合がある
名義預金とは、預金の名義と実際の所有者が違う預金のことをいいます。
たとえば、暦年贈与を親から子へ毎年行うとします。子供は毎年親から110万円もらえれば嬉しいのですが、親とすれば「子供が将来本当に困った時に使って欲しい」と思うため、できれば使って欲しくありません。
そこで、子供に本人名義の通帳を作らせた上で、通帳も印鑑もキャッシュカードもすべて親が預かって毎年暦年贈与を繰り返します。こうすれば、子供に預金を使われることなく相続財産を減らすことができるからです。
でもこれは、贈与とは言えませんよね。なぜなら、子供名義の預金の真の所有者は親ですから。したがって、この場合暦年贈与は認められません。子供名義の口座の預金はすべて親の財産です。
では、仮に、子供がものすごくしっかりした人物だったらどうでしょうか?子供が「贈与はありがたく受けるけど、自分が通帳を持っていると使ってしまうかもしれないから、カードも何もかも(親が)持っていて」と言ったらどうでしょう?これだと、先程の例と外形的には何も変わりませんよね?
ではこれは暦年贈与でしょうか?名義預金でしょうか?
暦年贈与はこういった判断がとても難しいため、名義預金とみなされる場合があります。
定期贈与とみなされる場合がある
たとえば、110万円を10年間続けて暦年贈与したとします。これを別の角度から見ると、1,100万円を10分割して毎年定期給付したとも言えませんか?つまり、「はじめから贈与する金額は1,100万円で、それを単に10分割して給付しただけ」という見方です。これを、定期贈与といいます。
暦年贈与であっても、一定の期間に一定の金額を給付する目的で行われた贈与であるとみなされた場合は、暦年贈与ではなく定期贈与になってしまいます。
下図をご覧ください。親から未成年の子供への贈与に対して課税される贈与税の税率表です。
一般贈与財産用
基礎控除後の課税価格 |
200万円 |
300万円 |
400万円 |
600万円 |
1,000万円 |
1,500万円 |
3,000万円 |
3,000万円 |
税 率 |
10% |
15% |
20% |
30% |
40% |
45% |
50% |
55% |
控除額 |
‐ |
10万円 |
25万円 |
65万円 |
125万円 |
175万円 |
250万円 |
400万円 |
<出典> 国税庁作成『贈与税の速算表』より一部抜粋
暦年贈与であれば合計1,100万円を贈与しても贈与税は非課税ですが、定期贈与とみなされた場合は何と45%もの税率で贈与税が課税されてしまいます。ですから、節税策と思ってやっていた暦年贈与が定期贈与とみなされてしまうと、このように贈与税が生じてしまうリスクがあります。
相続・贈与の一体化とは
冒頭でお話しした「相続・贈与の一体化」とは、相続と贈与を分けて考えるのではなく、相続も贈与も個人から個人への財産の移転という点では同じなのだから、一体として捉えて課税しようとするものです。では、一体として捉えて課税すると、何が起こるのでしょうか?
現在の制度下では、贈与税の基礎控除を利用して暦年贈与を繰り返すと、多額の贈与が非課税で可能になります。またその結果、将来の相続財産が減少するため、相続税の節税も行うことになります。
ですが、相続税が改正され、たとえば暦年贈与で過去に移転された財産を何十年も遡って相続財産に持ち戻すようなルールになってしまったらどうでしょうか?
相続と贈与の一体化が行われると、このように暦年贈与による相続税の節税が難しくなる恐れがあります。
終わりに
生前贈与のさまざまな仕組みを正しく理解したうえで、この制度を活用すると、相続税の節税をすることができます。しかし、間違った知識のもとで贈与を行うと大変危険なため、十分に注意しなければなりません。
また、相続・贈与の一体化の流れを考えると、「贈与」「事業承継」「相続」をこれまでのようにバラバラに考えるのではなく、一体として捉えて資産形成のためのシームレスなタックスプランニングを行うことが必要になるでしょう。
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