2008年08月22日
持株会社を見直してみませんか?
なんか、久しぶりにブログを書きます。お盆から少し忙しかったのかなぁ?と言い訳しつつ…。
さて、最近、相続事業承継対策として、持株会社(ホールディングカンパニー)を見直す動きがあります。
持株会社で自社株保有することによる相続事業承継対策は、伝統的な手法と言えるでしょう。
A法人の株式をB法人で保有して、オーナーはB法人の株式を保有します。
このような株式保有形態の場合、オーナーがA法人の株式を直接保有する場合に比べて、オーナーの相続財産評価額が少なくなる場合があります。
いろいろな対策手法が講じられ、A法人の株式をB法人で保有し、B法人の株式をC法人で保有し、C法人の株式をD法人で保有するという対策も実際にあったようです。
平成2年以降、財産評価基本通達が再々改正され、持株会社を利用した相続事業承継対策は、その効果が小さくなってきました。
効果の縮小と合わせて、注目度も低くなっていった対策手法です。
もちろん今でも、まったく効果がないわけではありません。条件さえ良ければ、大きな相続対策効果を発揮する場合があります。
平成18年の会社法施行に合わせて、組織再編税制が大幅に改正されました。
これにより、新たに持株会社を設立しやすくなりました。
持株会社を新設するというご提案も何度か経験がありますが、最近は新設よりも既存の法人を利用するご提案が多くなってきています。
僕たちのお客様は、法人を数社設立されている方が圧倒的に多いです。
核になる本体の法人が1社、そして関連会社が数社といった状況です。
この関連会社は、本体及び他の関連会社と資本関係がある場合もあれば、法人間の資本関係はない場合もあります。
この既に設立されていて、事業を行っている法人を利用して、持株会社を作ります。
持株会社を作るといっても、その会社へオーナーが保有している株式を売却してもらうだけです。
そうすると、今ある事業法人が持株会社となります。
持株会社で株式を保有するメリットは?
これは、株式の価値が増加した場合の含み資産42%控除です。
法人の株価は、現在の評価方法で評価すると、法人が利益を少しでも出している限りは株価が上昇していきます。上昇した部分は、いわゆる「含み益」です。
A法人の「含み益」は、個人で株式を保有しているとすべてが課税対象となります。ところが、A法人の株式をB法人で保有していると、A法人の「含み益」は42%(法人税分)控除として評価されます。
結果的にオーナーは、A法人の株式を直接保有しているよりも、B法人にA法人株式を所有させて、A法人株式を間接保有するほうが、株式の上昇による相続財産増加を抑えることができます。
以前は、このメリットを中心に考えて、持株会社設立あるいは組織再編を検討していました。
しかし、最近は社内の様々なニーズに対応して持株会社を設立した結果として、相続対策にもなったというケースが多いように思います。
ニーズとは、例えば、オーナーが保有する自社株式を現金化したいというニーズ。
例えば、親族に株式が分散していて、株式発行法人で自己株式を買い取りたいというニーズ。
前者のニーズは、最近多いニーズです。
まだ退職ができない、したくないので、退職金はもらえない。でも、元気なうちにある程度まとまったお金をもらって、少し自由に使いたいという経営者の方が増えてきています。
後継者に売却するという選択肢もありますが、後継者が借入をしなければ購入資金が用意できない場合がほとんどです。
そこで、関連会社に売却するという案が浮上します。
関連会社で事業をやっている法人があれば、株式の購入資金が貯まっている場合があります。また、事業法人であれば、借入をしても返済していくことができるでしょう。
結果として、関連会社は持株会社としての性格も持つことになります。
関連会社の株主を後継者としておけば、当該取引により、実質的にはオーナーから後継者へ株式移転を実行したこととなります。
後者のニーズも最近多いニーズです。
親族に分散した株式を整理したいと思った時、まず思いつく案の一つのようです。
アイデアとしては良いアイデアです。親族の理解も得やすい場合が多いようです。
問題は税務です。
発行法人による自己株式の買い取りは、売り手側の売却益が基本的には「配当」とみなされます。この結果、最大で50%近い所得税が課税されます。
50%の課税は大きいですよね。
そこで、発行会社ではない関連会社への売却案が浮上します。関連会社へ売却すれば、売り手側の所得税は20%で済みます。
結果として、関連会社は持株会社としての性格を持つことになります。
この場合に、関連会社の株主を後継者としておけば、当該取引により、実質的には分散していた株式を後継者へまとめることができたことになります。
オーナーが株式を換金する場合にも、同じく売却益に対する所得税の問題があります。発行法人への売却ではなく、税率の低い関連会社への売却を選択するのは、合理的な判断です。
他に、法人税の問題も検討の余地があります。
B法人がA法人の株式を保有し、A法人から配当を受ける場合、持ち株比率によっては、その配当が全額益金不算入になる場合があります。
また、B法人が保有するA法人の株式を、A法人が自己株式買い取りした場合、B法人では節税メリットが得られる場合があります。
最終的に、株式発行法人が自己株式買い取りする予定であっても、当面は関連会社で株式を保有してもらったほうが有利と言えそうです。
相続事業承継対策は、相続税はもちろんですが、法人税、所得税など総合的に検討して進めていく必要があります。
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