2024年06月12日
中小企業のM&AはFAでなく仲介です
皆様こんばんは！
今日はM&Aについて、あくまで「私見」を紹介させていただきます。
M&A支援においては、「FA（ファイナンシャル・アドバイザー）」と、「仲介」という２類型があります。
「仲介」は、売り手と買い手の双方と契約し、仲介者が双方の間に立ち、どちらに与するわけでもなく、「取引の成立」を目指し、取引のアレンジ・調整を行います。成約に至った場合、双方から仲介手数料を頂戴します。
一方、「FA」は、どちらか一方とだけ契約し、依頼者の利益の最大化を目指します。売り手のFAは１円でも高く売れるよう、買い手のFAは１円でも安く買えるよう、働くということになります。報酬は依頼者のみから頂戴します。
こう書くと、売り手の依頼者も、買い手の依頼者も、「仲介」でなく「FA」でお願いしたい、という話になると思います。
また、「仲介」は、高く売りたい売り手と、安く買いたい買い手の双方と契約するため、利益相反であるという、ごもっともな指摘が、経産省をはじめ色々なところから聞かれます。特に経産省は、あからさまにこれを問題視しており、最近では、M&A仲介に重要事項説明を求めるようになりました。
しかし、タイトルに記載しましたとおり、「私見」は完全に「仲介」が正解だと思っています。両手の手数料が欲しいのは否定できませんが、それは二の次です。
売り手の多くは、後継者がいなくて、このままでは会社の存続ができない、そうすると従業員や取引先はどうなる・・・それを解決するためにM&Aを決意することが圧倒的に多いのです。１円でも高く買ってくれる人に売るのではなく、「この買い手の社長になら、うちの会社を託せる」と思って買い先を決めます。売り手の多くが、「信頼できる相手に会社を託せ、上記したような心配事が解決できること」が最優先であり、お金については、「安くは売りたくないし、高く売れるに越したことはないが、相場であればそれで良い。取引の成立が最優先」という方が圧倒的に多いのです。
買い手のFAは１円でも安く買おうとします。そもそも、株価の算定方法は様々であり正解がなく、「適正価格＝売り手買い手の合意価格」という答えがない世界です。買い手FAは、それらしき理由をつけ、株価が安くなるような株価算定ロジックをもって、交渉します。売り手のFAと、買い手のFAとの間で、経験値・力量の差、常識の差があることもよくあります。
こうなってくると、売りのFA、買いのFA間でのバトルになり、それを終結させるのは、売り手依頼者か買い手依頼者のどちらかの「感情的な妥協」になります。妥協する側も気持ちが良い話ではないですし、反対側も、もし希望条件が通ったとしても、同様に気持ちが良い話ではありません。M&Aは、売って買って終わりではなく、一緒になって融合していくことが目的です。
このように、数字・理論ではなく、「感情」が大切なのが中小企業のM&Aなのです。
双方の間に立ち、双方が気持ちよく取引できるようアレンジする「仲介」は、両手から手数料を頂戴する価値がある難しい仕事だと思っております。実務経験がない役人には分からないですよね・・・
以上です。これからも、良いM&Aをお手伝いできるよう、頑張ってまいりたいと思います！
