2011年11月09日
M&Aのリスクはなくならない
こんにちは(^O^)/先日、東京でセミナーに参加しました。
グループディスカッションを行う時間があり、その時に席が近くになった方が岩手県釜石から来られていました。
釜石は陸前高田の隣町で、釜石は津波で町の半分が壊滅状態となったようです。
隣の陸前高田は、見渡す限りの更地とのこと。
不謹慎だと自覚して書きますが、釜石周辺では、現在、ものすごい数の相続手続きの件数が発生しているそうです。ある司法書士は毎日深夜12時過ぎまで休みなく仕事をしているそうです。
震災からしばらく経ちますが、東北の方から直接このような話しを聞くと、改めて被害の大きさを実感します。
1日も早い復興を願うばかりです。
さて、日本を代表する精密機器メーカーであるオリンパスの不正経理が発覚しました。
1,000億円の損失隠しという想像できない額の不正です。
監査法人や監査報告書にサインをした会計士を非難するような報道もありますが、個人的には気の毒な気もします。
で、今回は中小企業のM&Aの話しなのですが、ほとんどの非上場中小企業で作成されている財務諸表は、「財務諸表」という呼び名ではなく「計算書類」という言い方が正しいというと驚く方が多いようです。
実は、財務諸表と言えるのは、ざっくり言うと、監査法人の監査を受けたものが財務諸表と呼ばれます。このことは、財務諸表等規則に定められています。
ほとんどの非上場中小企業が作成しているのは、監査法人の監査を受けいない「計算書類」です。
中小企業のM&Aの場合、デューデリジェンスは、この計算書類を基に行います。
そして、デューデリジェンスをすると、M&Aの買い側は、買収対象会社の隠れたリスクが把握できると考えている場合が多くあります。
我々がデューデリジェンスのお手伝いをする場合も、デューデリジェンスを行うことで簿外債務等のリスクが完全にヘッジされると思い込んでいる買主がいます。
しかしながら、それは大きな誤りです。
今回のオリンパス事件がそれを証明しています。
監査法人の監査を受けた財務諸表であっても、今回のような損失隠しのような問題がある場合があるのです。
オリンパスが会社としてどのような意思決定を行っていたか、内部でのチェックの仕組みを持っていたかは分かりませんが、経営陣が意図的に隠そうと思えば、今回のような損失隠しを実行することができるのです。
非上場中小企業を見てみるとどうでしょうか。
そもそも監査法人の監査を受けている会社はほとんどありません。
まともな監査役がいる会社がどれほどあるでしょうか。
中小企業のM&Aで買収対象となる企業は、このような企業なのです。
デューデリジェンスをどれだけ詳細に行おうが、内部告発がない限り明らかにならない事実がある可能性があります。
そうでなければ、M&A契約に必ず盛り込まれる「表明保証」条項などは必要ありません。
M&Aに取り組む中小企業経営者は、その取引に内在するリスクを的確に把握することが必要です。
そして、リスクをゼロとすることはできません。
M&Aを行うことによって期待できる効果で、リスクをカバー又は払拭できるかという視点が必要です。
そのM&A取引についてのビジョンを明確にしなければ、効果の測定はできません。
ビジョンを明確にするということがリスクテイクへの第一歩といったところでしょうか。