2023年09月26日
オペレーティングリース(JOLCO)の実質利回りは?
航空機や船舶、コンテナ等への投資事業であるオペレーティングリース(JOLCO)は、損金計上も出来るので利益の繰延べ(決算対策)も兼ねて良く利用される金融商品です。
さて、このオペレーティングリース(JOLCO)に投資すると、果たしてその利回りはどの程度なのでしょうか?
中には利益の繰延べ効果があるので利回りは二の次だ、と言う方もいるかも知れません。
しかし利益の繰延べも利回り換算して、その効果を判断する事は可能ですし、その利回りの結果によっては投資判断も変わるかも知れません。
今回、一般的なオペレーティングリース(JOLCO)のモデル条件を前提に利回り計算してみます。
<モデル条件>
出資金額:100百万円
購入選択権:10年後
購入選択権行使時の返還金:106百万円
初年度損金額:70%(▲70百万円)
2年度損金額:30%(▲30百万円)
良くあるタイプの案件です。
※為替変動は考えないものとします
まずキャッシュフローを考えてみます。
法人税率は35%とします。
(出資金の拠出時)▲100百万円
キャッシュフロー ▲100百万円
初年度 (法人税減少によるプラス)+24.5百万円
※初年度損金70百万円×税率35%=24.5百万円
キャッシュフロー ▲75.5百万円(=▲100百万円+24.5百万円)
2年度 (法人税減少によるプラス)+10.5百万円
※初年度損金30百万円×35%=10.5百万円
キャッシュフロー +10.5百万円
3~9年度 キャッシュフロー ±ゼロ
10年度 (出資金の返還)+106百万円
(法人税の納税)▲37.1百万円
※雑収入+106百万円×税率35%=37.1百万円
キャッシュフロー +68.9百万円(=+106百万円-37.1百万円)
トータルキャッシュフロー +3.9百万円(=▲75.5+10.5百万円+68.9百万円)
となります。
この初年度から10年度のキャッシュフローの実質利回りを計算した結果は下記の通りです。
【実質利回り】+0.55%
実質利回りは複利での運用利回りです。
したがって、このオペレーティングリース(JOLCO)に100百万円を投資する場合、実質的には75.5百万円を複利+0.64%で10年間運用する事になります。
仮にオペレーティングリース(JOLCO)への投資の目的が利益の繰延べであった場合、利益を繰延べる事は、投下資金を複利+0.55%で10年間運用した結果の経済的利益と同じ事です。
さて、この10年複利+0.55%という水準をどう判断したら良いのでしょう?
ちなみに本稿執筆時点の米国債10年の利回りは約4.4%です。
もし、オペレーティングリース(JOLCO)に100百万円を投資しなかった場合、手元には65百万円が残ります(100百万円-法人税35百万円=65百万円)。
この65百万円を元手に、10年以内に税引後3.9百万円以上増やす事が出来るなら、オペレーティングリース(JOLCO)に投資するよりも実質利回りは良い事になります。
仮にこの65百万円で米国債10年(年利4.4%のゼロクーポン債と仮定)に投資すると、10年後の税引後利益は約22.7百万円になります。
※((65百万円×(104.4%の10乗)-65百万円)×(1-35%))=22.7百万円
オペレーティングリース(JOLCO)も米国債も為替リスクは同じです。
はたしてオペレーティングリース(JOLCO)へ投資する意味は?!利益を繰延べる事の経済的価値は?!
(おまけ)
今、期間6年の実質利回りが6%を超えるオペレーティングリース(JOLCO)がございます。オペレーティングリース(JOLCO)としては、今まで見たこともない実質利回りとなっており、純投資としても魅力的ではないかと思っております(この案件は偶然の産物なのですが)。
もし詳細にご興味ございましたら弊社コンサルタントへお問い合わせいただきたいと存じます。