2020年12月01日
今後の贈与税・相続税の見直しの方向性についてー資産移転の時期の選択に中立的な税制
コロナ禍のなかで、もう師走となりました。
今月12月には、令和3年度の税制改正大綱が発表されますが、先月11月の政府の税制調査会で、「資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築等」が議論されています。
具体的には、贈与税の暦年課税の場合、生前贈与は、相続前3年間のみ相続財産額に加算して相続税を課税することになっています。
【例えば、父が、息子に10年間、毎年100万円(1年で110万円までは贈与税は非課税)の金融資産で総額1,000万円を贈与していて、10年後に父が亡くなり相続が発生した場合】
父の相続財産に加算されるのは、300万円にみであり、その他の700万円は、相続財産とならないことになります。
もし、この生前贈与がなければ、1,000万円すべてが、父の相続財産になり、その他の相続財産と合わせて相続税の対象となります。
すなわち、生前贈与と相続では税負担が大きく異なることになります。
これは、まさしく資産移転の時期に中立的な税制になっていないことになります。
(なお、相続時精算課税は、精算課税選択後の贈与は、すべて相続財産とされるため、資産移転の時期に中立的な税制となっています。)
各国の税制を見てみると、下記のように中立的になっています。
・米国は、贈与時・相続時の双方で、生涯にわたる財産の移転額を累積して課税し、税率は、贈与税・遺産税で共通。基礎控除も贈与税・遺産税で生涯累積
・ドイツは、贈与時・相続時の双方で、過去10年間の財産の移転額を累積して課税し、税率は、贈与税・相続税で共通。基礎控除も贈与税・相続税で10年間累積
・フランスは、贈与時・相続時の双方で、過去15年間の財産の移転額を累積して課税し、税率は、贈与税・相続税で共通。基礎控除も贈与税・相続税で15年間累積
また、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」及び「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」
についても、資産移転の時期に中立的でない税制となっています。
令和3年度及び今後の税制改正で、資産移転の時期に中立性という観点から贈与税・相続税に見直しや、上記の非課税措置の廃止等の方向性がでてくることが考えられ
ますので、留意していくことが必要です。