2022年07月19日
恐竜の経済効果、高騰化する化石
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ようこそ、『ジュラシック・ワールド』再び!
子どもの頃から、恐竜が大好きでした。初めて自分で買った本は、コナン・ドイルの『失われた世界』(1912年作品、恐竜をめぐるSF冒険小説)でした。
さて、映画『ジュラシック・パーク』の公開から約30年を経て、第6作目にあたる『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』の日本公開がいよいよ迫ってきました。『ジュラシック』シリーズは、累計50億ドル以上の世界興行収入を記録しています。今回は、シリーズ完結編ということなので、期待は高まります。
興行収入とともに、既にオンラインショップ等で関連グッズが販売されており、日本においても経済効果は大きなものになるでしょう。
コロナ禍でも「恐竜展」は大人気!
海外の「恐竜展」は博物館で開催されるため、それほど大規模にはなりません。商業的に大規模な「恐竜展」を開催するのは、日本独特の現象のようです。恐竜ファンにとって、日本はとても恵まれた環境にあります。
昨年(2021年)は、ソニーグループが主催する『DinoScience 恐竜科学博_ララミディア大陸の恐竜物語』がパシフィコ横浜(横浜みなとみらい)で開催(2021.7.17~9.12)されました。
https://www.frontage.jp/dino-science/
大型CG映像や3DCGモデルなども駆使し、生きた恐竜の生態を、最新の研究結果に基づき如何に見せるか、主催者の並々ならぬ思いが伝わってきました。ヒューストン自然科学博物館から門外不出といわれるトリケラトプス「レイン」(写真左)の化石が初めて紹介され、また、最大で最強の肉食恐竜ティラノサウルス「スタン」(写真右)は、息をのむ大迫力でした。
『DinoScience 恐竜科学博』の累計入場者数は26.5万人に上り、同時期開催のイベントでは国内トップの入場者数となりました。国立科学博物館で開催された『恐竜博2019』(2019.7.13~10.14)の入場者数68万人には及びませんが、コロナ禍の開催であったことを考えると、『DinoScience 恐竜科学博』の人気ぶりが分かります。
33億円で落札されたティラノサウルス
加速度的に進む最新の研究の成果を、一般の人々でも気軽に体感できることが「恐竜展」の醍醐味です。
かつて、ティラノサウルスは、尻尾を引きずりながら、直立姿勢で歩くイメージがありました。その後、研究が進み、体を伸ばし水平にした姿勢で歩くことが確実になっています。『ジュラシック・パーク』の中でも、水平姿勢で疾走する迫力ある場面が見られます。また、恐竜は絶滅したと思われていますが、鳥類の先祖が太古の恐竜であったこともほぼ定説になっています。
ところで、2020年10月6日、古生物学会を震撼させる事件が起きました。ティラノサウルス「スタン」が、化石としてはオークション史上最高額となる3180万ドル(当時の為替レートで約33億円)で落札されたのです。
米国のブラックヒルズ研究所は、トラブルを原因として一人の取締役(株35%保有)を解任したところ、持ち株分の支払いを求められ、裁判所の命令により、所有していた「スタン」を競売し支払に充てることになりました。落札者が匿名であり、博物館ではなかったことから、今後の研究ができなくなるのではないかとの不安の声が上がりました。
※2022年3月23日、アブダビ自然史博物館(2025年完成予定)に「スタン」が収蔵される旨、発表がありました。
化石は自然遺産であり、研究の対象であることから、その取引には、各国、厳しい規制がかけられています。一方、ブラジルや中国、モンゴルでは「闇取引」で化石が高値で売買されるという実態があります。
恐竜の化石が高値で取引されるようになれば、研究対象にするよりも「売却した方が儲かる」という考えが広がりかねません。事実、発掘業者の活動が活発になったそうです。
古生物学者は、恐竜の骨などの計測を繰り返し、最新の技術や道具を用い、新たな分析結果を出していきます。入札競争がエスカレートすれば、大学や博物館の手が届かないものになってしまいます。
怪獣は日本が世界に誇る文化
子供の頃、恐竜に興味を持ったきっかけに、『ゴジラ』(1954年公開)の存在があったように思います。
「恐竜」は化石などから地球上に存在が確認されているもの、「怪獣」は架空の巨大生物、と整理されるようです。
ゴジラ映画シリーズは、既に国内・海外を合わせ40作品を超えます。『シン・ゴジラ』(2016年公開)は、国内の興行収入82.5億円の大ヒットになりました。海外版ゴジラも、2014年公開の『GODZILLA ゴジラ』以降、新作ラッシュが続いています。
世代を問わず大人気の『ポケモン』(1996年ゲームソフト)も怪獣系です。「怪獣」は、多くの恐竜ファンを生み出し、経済効果を大きなものにしてくれているのかもしれません。
※キャラクター「メディアミックス」総収益の世界ランキングによると、「Pokemon」の総収益(921億ドル/約10.1兆円)はトップにあり、「Hello Kitty」や「Winnie the Pooh」「Mickey Mouse」「Star Wars」等を出し抜いています。
https://finders.me/articles.php?id=1492
蛇足ながら、癒し系でファンの多い『すみっコぐらし』(2012年発表)、人気のキャラクター「とかげ」は、実は恐竜の生き残りです。
『ジュラシック・パーク』が警告するもの
『ジュラシック・パーク』は、科学者たちが、コンピューターを駆使して、化石から遺伝子情報の解析をして、本物の恐竜を復活させることから、ストーリーが始まります。パークにはたくさんの投資家の姿も見られました。
作家マイケル・クライトンは、映画の原作となる小説『ジュラシック・パーク』(1990年刊行)で、遺伝子工学を野放しにすることへの警告を発していました。
シリーズ5作目(2018年公開)では、生きた恐竜がオークションにかけられ、資本家等により、次々、落札されていきます。そして、次世代の恐竜を創造しようとする度を越えた遺伝子工学は、人類を破局に導く、と警鐘を鳴らします。
恐竜は、まだまだ分からないことがたくさんあります。学説はこれからも変わり続けるかもしれません。恐竜は、多くの人々の好奇心を掻き立ててつつ、一方、これからも大きな経済効果を生み出していくでしょう。
ただ、一恐竜ファンとしては、恐竜の化石が、投機目的の対象になることは絶対避けたいところです。
徒然に、太古の世界と恐竜に思いをはせながら、映画『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』を心待ちしている今日この頃です。