2017年06月09日
利回りはリスクの鏡
こんにちは(^o^)/2017年6月9日の日経新聞に「オフィス空室率3.41%に 東京都心5区4ヵ月ぶり上昇」という記事が掲載されています。
記事によれば、東京都心5区の5月末時点の空室率は3.41%と4月に比べ0.2ポイント上昇したそうです。上昇は4ヵ月ぶりとのこと。
来年以降の大型ビルの大量供給を控え下げ止まり感がでてきたそうです。
企業が完成前の大型ビルに移転を決めた影響で、募集が始まった既存のビルもでてきたそうです。
一方で大型ビルでまとまった空室が埋まる事例もあり、全体としての空室率の上昇は小幅にとどまったそうです。
従業員の増加に伴ってオフィス面積を広げたり、都心へ移転したりする企業の需要が根強く、賃料は41ヶ月連続で上昇とのこと。
都心への集中は止まりそうにもありません。
新しい大型ビルの供給が、既存の大型ビル、中小規模のビルにどのような影響を与えるか気になるところですが、都心の既存ビルの価値は需要が下支えしてくれそうですね。
さて、2017年6月7日の日経新聞に「東芝債、個人向け利回り急低下」という興味深い記事が掲載されていました。
東芝の債券の価格はかなり下がっているはずなのですが、東芝の個人向け社債の利回りが急低下しているとのこと。
「担保切替条項」という特約が発動し、担保が設定されたことが原因のようです。
記事によれば、東芝は4月28日、発行済みの社債2,100億円のうち、個人向けの600億円に担保を付けると発表したそうです。
担保には東芝が保有する定期預金を充て、同社債が債務不履行(デフォルト)に陥いるリスクは大きく後退したそうです。
個人向け社債は無担保債として発行された当初から担保切替条項が設定され、担保付きに切り替わる可能性があったそうです。
同条項を発動させるかどうかは社債管理者が判断するようになっているとのこと。
発動の条件は明示されておらず、起債時の開示資料には、社債管理者と発行企業が「協議のうえで」担保を付けるとあるだけだそうです。
今回の東芝の社債管理者は、三井住友銀行やみずほ銀行とのこと。
過去には経営破綻したマイカルの社債を巡り、管理者だった銀行が投資家の権利保全を怠ったとして集団訴訟を提起された経緯もあるそうです。
今回の担保設定により、東芝の個人向け社債は安全性が高まり、利回りは大きく変動しました。
国債対比の上乗せ金利は8%から4%台へと縮小。
債券の信用力が高まるとスプレッドは小さくなります。
同時期に償還される機関投資家向け社債は無担保のままで、スプレッドは7%前後で推移。利回りは、その投資対象が内包するリスクを映し出すものですが、市場ではダイレクトな反応が出ています。
記事では、社債投資家の多くは担保切替条項に注意を払っていないかったと解説されています。
私も初めて知りました。
東芝以外でも個人向け社債には担保切替条項がほぼ例外なく付いているそうです。
社債市場では「東芝債の教訓」を生かし、特約の有無なども加味したより丁寧な価格形成が進んでいく可能性があると記事は締めくくっています。
突発的なイベントのあった企業の社債利回りにも注目していく必要がありそうですね。