2012年01月26日
法人から個人への利益移転にご注意を
おはようございます(^O^)/本日の日経新聞の四国面に、「愛媛銀に『行員弁護士』」という記事が掲載されていました。
記事によると、愛媛銀行は、2月1日に弁護士登録を予定している34歳の男性を行員として採用したそうです。
1月25日現在で、四国4県の弁護士会の会員に企業や自治体で働く組織内弁護士はいないそうです。
いままで、四国には組織内弁護士が一人もいなかったということに驚きます。
ロースクール制度により弁護士が増えているようです。公認会計士も増えているようです。
今後は、企業などの組織に属する専門家も増えていくことになるでしょう。
弁護士が増えすぎて仕事がない弁護士がいると言われています。公認会計士が増えすぎて仕事がないと言われています。公認会計士については、大手監査法人の人員整理計画などが発表されるなど、より厳しい状況と思われます。
それぞれの業界では、人数が増えることによりそれぞれの士業の質が落ちるなどの弊害が取り上げられていますが、個人的には有資格者が増えることが悪いこととは思えません。
税理士資格などは、税務署OBに税理士資格を与える一方で、税理士試験自体はかなりの難関として新規参入を抑える制度になっています。
税理士試験などはもっと門戸を広げるような試験内容に変えるべきです。
資格で儲ける時代はすでに終わっています。
有資格者を広げると、競争が発生し、サービス料金が下がるでしょう。より多くの人が専門的なサービスを受けることができる機会が広がるでしょう。
競争が発生すると、努力をする資格者はより大きな付加価値をお客様に提供することができるようになるでしょう。サービスを受ける側が専門家を「選ぶ」という、他の業界では普通のことが一般的になるでしょう。
有資格者が多くなると、必然的に組織に属してその能力を発揮する資格者が増えるでしょう。
いままで外注するしかなかった専門業務を社内に内包したいというニーズはあるでしょう。あるいは、資格者が増えることにより、サービスが多様化し、外注しやすくなるというメリットもあるでしょう。
いずれにしても、有資格者の働き方が多様化するのは良いことです。
さて、養老保険の「全額損金プラン」について、最高裁判決が出ました。
最高裁の判断は、「給与課税されていない会社負担分の保険料は一時所得の必要経費には含まれない」というものでした。
養老保険の「全額損金プラン」のスキーム解説は省きます。
判決は、平成23年度税制改正ですでに法令化さた養老保険の「全額損金プラン」に係る課税関係と同じ内容です。
裁判の流れからすると国の逆転勝訴ですが、既に法制度化された内容であるため、驚きはありません。
注目すべきは、判決文です。
争われたのは、養老保険の満期保険金を受け取った際の一時所得の必要経費として、満期金を受け取った個人が負担していない保険料の額を経費に算入できるか否かです。
必要経費と認められるのは「その収入を得るために支出した金額」と条文には示されていますが、この「支出した金額」とは「収入を得た個人が自ら負担して支出したものと言える場合でなければならない」と判示されました。
今回は、養老保険の裁判でしたが、これは他の生命保険を利用した法人から個人への利益移転スキームに大きな影響を与えると考えたほうが良いと思われます。
一部の保険代理店や募集人などが、法人及び法人オーナー経営者に対し、逓増定期保険や終身保険を利用して法人から個人へ利益移転(資金移動)するスキームを提案しているようです。
法人が逓増定期保険や終身保険の契約をし、その保険の解約返戻金が低い時にオーナーへ保険契約を移転します。その後、オーナーが保険料を支払い、解約返戻金がピークを迎えたり、元本以上となったタイミングで解約するというスキームです。
メリットは、オーナー側の税負担が低いことです。役員報酬で法人から個人へ資金移動すると、50%の所得税が課税され、手取りは残り50%です。
一方で、生命保険契約の解約返戻金は、一時所得課税で、最大でも25%の課税です。
しかも、これまでの考え方であれば、法人が支払った保険料も一時所得の必要経費として算入できるため、オーナー側は課税所得が発生しないという夢のようなスキームです。
ところが、今回の裁判で、一時所得の必要経費に算入できるのは、「保険金や解約返戻金を受け取った個人が自ら負担して支出したもの」と明確化されてしまいました。
また、これに先んじて、平成22年1月の国税不服審判所の採決事例(非公開事例)によると、法人が契約した終身保険を個人に移動して解約した案件について、今回の裁判と同様の判断が下されています。
保険代理店や保険募集人によっては、「法人と個人の間で、解約返戻金相当額で契約を売買すれば問題ない」という危険な説明だけをしているケースもあるようです。
法人が個人へ資産を売却するのです。合理的な理由が必要です。
理由がなければ、租税回避行為と見られたり、同族会社の行為計算否認を受けたりといったリスクがあります。
また、基本的には会社が損をするスキームですので、株主が複数いるような会社であれば、株主から訴訟を起こされるというリスクも否定できません。
現在、まさにこの法人から個人への利益移転プランに取り組んでいるという法人および法人オーナー経営者は、本当に契約を移転するか、もしくは移転してしまった契約をどのように取り扱っていくかということについて、十分に検討する必要があると考えます。
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